特別ゲスト: グロービス・グループ
最高執行責任者(COO) 加藤隆哉
要旨作成:山田耕太郎、山本道宏
大学ベンチャーの現状としては、アメリカと日本の比較をする事でより確かな認識が得られる。日本の大学全体の研究費は、アメリカの約半分である。ライセンス収入になると、とたんに300分1になってしまう。大学ベンチャーのアメリカにおける経済効果は5兆円規模、雇用創出効果は27万人にのぼるが、日本でのそれらはおそらく比べるまでもない。また、アメリカで現在メガベンチャーと呼ばれているものの
中に、ヒューレットパッカード、シスコシステムズなど多くの大学発ベンチャーがあることを再認識しておきたい。このような現状の背景にはヴァンダービルト大やベイラー医科大のように大学と連携した資金ファンドの存在があることも付け加えておく。 日本で大学発ベンチャーを起こす際の問題点としては、果たして大学教授に経営はできるのか?経営できる人材が確保できるか?技術は事業化に適するのか?などがあ
るが、これらに明確な答えは出ない。ベンチャーをおこすステージとして、 ボストンにおける学生主導の大学発ベンチャーOuterware.Incを例に紹介する。これは実際にincTANKが現在インキュベート中
の事例である。もともと、学生数名が持ち込んだASP(アプリケーションサービスプロバイダ)向けのソフト事業の内容であった。2000年秋、MIT内でのビジネスプランコンテストで入賞を果たすが、メンバー内に意識格差があり、インキュベータの手によって一度解散され、メンバーを一新、社名も変更した。その後全く新しいシステムを再度、市場・動向調査に基づいて構築し、市場性が確認された。現在2つ
の投資家グループと協議中、契約間近である。 この事例のポイントとしては、インキュベータの1人がコ・ファウンダーとして密接に関与し、ミスの早期発見、早期対処に努めた事、また人材の出入りが激しいた
め、残った者のモチベーションをどう保つか、チームとしていかに動かし、成長させるかという支援が必要であったことなどが挙げられる。人材面では非常に多様性が高く、文化的バックグラウンドを共有するものは1人としていない。経験者をコアに配置し、クオリティの高い人材を常に供給することに努めた事、メンターの存在などが特徴として挙げられる。
ベンチャーを起こしたのち、基本的に必要なものは[技術]をコアとして[人]・[知恵]・[カネ]である。それ以外に[ビジョン]、[理念]、時には[思い込み]というものも場合によっては必要になってくる。また、コアとなる人材には、いくつかの役割(CXO)が必要であるとともに、違ったキャラクターを備えた方がよい結果が得られる。
最後に、アメリカはベンチャー企業を起こしても、失敗してよいという風潮があるが、日本にはない。変わらない根源は文化にあると思われる。今こそ、日本は変わるべきである。