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「東大先端研の試み」
東京大学先端科学技術研究センター
 センター長 南谷崇

                    要旨作成:兼橋正人

 先端研では、現在5つの大部門(研究戦略、情報、生命、材料、知的財産権)における先導的基盤研究をすすめている。これはこれからの先端研を支える最も重要な骨格を形成するものである。さらに組織運営構想のねらいとして、今ある4重点分野を超えた先導的研究領域の開拓、及び、既成分野と既存組織の枠を越えた取り組みがある。つまり、新しい分野の創造というものが大きな一つの挑戦であり、これは文理融合といえば簡単すぎるだろうか、未知の領域に踏み込むというものであることは変わりないと思われる。

その組織運営構想の概要として、(1)プロジェクト中心のオープンラボ構想、(2)社会との接点をつくるオフキャンパス構想などがある。

(1)のオープンラボ構想に関してはプロジェクト毎に研究開発戦略なるものを打ち立て、研究を遂行していくものである。その研究開発が実際どのように社会に役立つのかということを意識するのは、研究する側にとっても目標が明確になり研究意識を高めることができるばかりではなく、外側の人間も研究の意義を理解しやすくなり、より透明化した大学運営が可能となる事が期待される。このような取り組みを実施するには大学の仕組みそのものを変える必要もあり、特任性の導入、評価基準の多様性の確保、と様々な案が考え出されている。

そして(1)にも繋がることであるが(2)のオフキャンパス構想も非常に重要なものである。大学が社会との接点を持つことの必要性が言われて久しいが、今、具体的なプロジェクトが動き始めている。現在テクノロジービジネスということで、リエゾン、インキュベーション、スクール、コンサルティングという分野の確立を進めており、そこでは原理・サイエンスの事柄をキャンバスインキュベーションで応用の可能性を探り、それを社会へ提供するという一連の作業の効率化を狙っている。

上記の事柄は、5ヵ年プロジェクトとして進行中である。5年後には外部資金70%での運用を目指し、産学連携がよりスムーズにいくために人材交流を活発に行い、流動性を確保する必要もある。先端研の目指すところは、

     競争原理と流動性に基づく新しい研究重点型大学の制度モデルの提案

     大学が社会へ展開し相互作用を起こす新しい研究開発システムモデルの提示

という言葉に集約できる。

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