「Conflict of Interest (利益相反)」
レックスウェル法律特許事務所
弁護士・弁理士 平井昭光
要旨作成:渡邉りつ子
「産学連携」を考えていくうえで、「Conflict of Interest」避けることのできない重大な問題である。そこで今回は、演者:平井弁護士がこの背景・原因・結果などについて説明し自らの意見を織り交ぜながら、参加者の意見も引き出し、全員で考えていくことになった。
・ まずその前提として、混乱されがちである似たような概念三つの整理
Conflict
of Interest(COI) 利益相反
Conflict of commitment 責務相反、職務責務相反(様々な訳語あり)
Institutional conflict 機関における利益相反
・ 背景(問題の所在)
産学連携には利益相反は不可避といわれている(もちろん産学連携にかぎらず利益相反はある)。産学連携は、目的とするところが180度異なるSocietyの衝突から生じると説明できる。(Academia−e.g.真理探究、Industry−e.g.利益追求)
しかし、平井弁護士はそれだけではなく、そもそもヒトがSocietyで活動すると必ずどこかで二つの社会・規範・組織にまたがることがあり、これらすべて利益相反である、その調整をどのように行うかが最大の問題であり、そのルールを考えていかないといけない、といっている。また以前から利益相反・責務相反が存在していたとはいえ公共性が強かったため許されてきたが、産学連携になると公共性がかなり薄れて営利性が強く出てくるので問題となるのであり、より注意が必要である。
・ 具体例―アメリカを例に―
アメリカはすでに産学連携・利益相反を経験しておりそれに倣い考えていく。
<利益相反(原因)の結果>
1.研究者の誠実さが損なわれる。
2.研究結果に偏見が持ち込まれる。
3.学生の学業の進歩への影響
4.本来の研究の方向性がねじ曲げられる。
5.研究機関に対する一般の人と社会の信頼のSupportが失われる。
6.本来研究者が研究に使うべき時間が外の企業に使用したため削られる。
7.公共の資金が不適切に使用される。
以上が産学連携の予想される7つの弊害である。そのためにCOIが問題となるのであり、またその解決策も問題となってくるのである。
・ 日本において
日本では国家公務員法などの倫理規定はあるものの、利益相反については法的にきちんと整備されてはいない。各大学によるというのが現状である。その規定の作成で考慮していかなければならないのは、
1.開示の問題―要件・手続き
2.禁止と同時に管理の重要性
特にCOIの問題ではルールを決めて規制していくだけではなく管理をしっかりしていくことが大事である。禁止するだけが能ではなく、やってはいけないことを決めて、やっていいものをどう管理していくか、ということが非常に重要。例えばCOI担当者、カウンセラーのようなものを設けるなど。あくまでもCOIを論じている世界はいわば「やってもいいけれどやると困るので問題になっている」世界であって、「これはやってはいけない」と定めるのは「法の世界」であり全く異なる世界である。