2022年7月16日、江東区・東川小学校の生徒を対象に、発明・発見教室「目に見えない素粒子を見る! ~ノーベル賞にも輝いた発見と科学者~」を実施し、1~5年生までの生徒・19名が参加されました。
宇宙から地球に届く物質には、隕石のように大きなものだけでなく、とても小さくて人間の目では直接見ることができないものもあります。物質の最小単位、私たちの体を作っている「素粒子」も、その1つです。宇宙空間を高いエネルギーで飛び交っている素粒子「宇宙線」は、常に地球へ飛んで来ています。何でも通り抜けて進むことができ、その成分にはアルファ粒子(放射線の一種)が含まれます。
宇宙線の存在は、1912年にオーストリアの科学者ヴィクトール・フランツ・ヘスが発見しました。ヘスは、富士山の標高を越える高度5kmまで気球に乗って、高い(宇宙に近い)ところほど宇宙線の成分である放射線の量が増えていることを観測して宇宙線の存在を確かめました。この功績から、ヘスは1936年にノーベル物理学賞を受賞しています。
今日の発明・発見教室では、サイエンスコミュニケーターのゆーみるしー(青木優美)さんを講師に迎え、宇宙線が観察できる実験装置「霧箱」を、ペットボトルやプラスチックのお椀、アルミホイル、サランラップ、黒い布や画用紙など、身近な道具や材料を組み合わせて作りました。
「霧箱」の中は、気化したアルコール蒸気を冷やした状態で満たし、過飽和状態( 蒸気が飽和点以上に存在する状態)にします。ここを宇宙線が通過する時に電子を引き寄せ(電離し)たことで生まれたイオンを利用して、宇宙線が飛んできた跡を雲として見ることができます。
参加者は、 ゆーみるしーさんのお話とクイズで宇宙線について学んだあと、2人1組になって2種の霧箱を1つずつ作りました。霧箱の中に入れたアルコールは、シャーベット状の氷に融雪剤を混ぜたもので冷やし、宇宙線を観察しました。
今回の実験には、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK)の資材貸出協力を得ました。
また、ドライアイスを使わないで行う霧箱実験について、北海道教育大学札幌校の柚木 朋也 教授からご助言をいただきました。
▲ 霧箱での観察の様子(KMS撮影動画)※宇宙線が通った跡には、スッと線状の雲が走っています。